ベルギー出身の俳優メルレイン(Merlijn)

ベルギー出身俳優 メルレイン(Merlijn)インタビュー|ヒラタオフィス

01 / PROLOGUE

ベルギー出身で、ヒラタオフィスに所属する俳優メルレイン(Merlijn)。ベルギーの小さな村で、草の上に寝転び、流れる雲を眺めていた少年は、高校時代に初めて立った舞台で「本当の自分を見てもらえた」と感じたことをきっかけに、俳優を志しました。

オランダで演劇を学び、富山の劇団で季節の移ろいに触れ、いまは日本で新しい日々を重ねているメルレイン。故郷の記憶から、演じること、日本で見つけた「好きな時間」まで、話を聞きました。

CHAPTER 01

故郷の風景

Memories of Vossem

故郷の庭と木

Q.ベルギーのどのような場所で生まれ育ちましたか?
町の風景、空気、人々の雰囲気など、覚えていることを教えてください。

私の故郷は、ベルギーの首都ブリュッセルの近くにあるフォッセムという小さな村です。実家は昔の農家で、家の周りには畑が広がり、大きな庭もありました。

庭では母が花を育て、父はいつも野菜や果樹の世話をしていました。

故郷を思い出すと、毎朝、教会の鐘の音で目を覚ましたことや、周りの森や畑、川で夢中になって遊んだことをよく覚えています。

時々、家の隣の畑で農家の方のトラクターに乗せてもらうこともありました。また、道で農家の方とすれ違うと、自分も農家の一人になったような感覚で挨拶をしていたのを覚えています。

故郷の庭

Q.子どものころ、好きだった場所やよく過ごしていた場所はありますか?

庭の裏です。長く伸びた草の上に寝転び、夕方になって母に「夕食だよ」と呼ばれるまで、何時間も空や流れる雲を眺めていました。チョウやてんとう虫を見たり、コオロギの鳴き声を聞いたり、夏の草の匂いを感じたりして過ごしていました。

そこには、弟と父と一緒に「Een hutje voor een dutje」という小さな小屋を作りました。文字どおりに訳すと「昼寝のための小さな小屋」という意味です。この小屋は、子どものころに一番好きだった場所の一つでした。暑い夏の日には弟と一緒によくそこで夜を過ごし、静かな夜に話をしながら星を眺めていました。

小屋の入口に立つ子どもたち
CHAPTER 02

演じること

Finding the stage

室内で語るメルレイン

自由になれたような感覚。
そして初めて、
本当の自分を見てもらえた。

Q.オランダの大学で演劇を学んだとのことですが、なぜ演劇を学ぼうと思ったのでしょうか?

初めて演技をしたのは、高校時代に先生が企画した学校の演劇がきっかけでした。私は15歳くらいでした。あまり期待せずに参加し、小さな役をもらったので、最初はあまり深く考えていませんでした。

でも、練習が進むうちに先生が少しずつ私のセリフを増やしてくださり、最後には作品の最後のモノローグまで任せてもらいました。

本番では役に完全に入り込み、とても自由になれたような感覚がありました。

公演後には先生や生徒たちから「とても感動した」「こんな姿は初めて見た」と声をかけてもらいました。中には涙を流してくれた人もいました。

その時が、私にとって初めて「本当の自分を見てもらえた」と感じた瞬間でした。

俳優を目指すきっかけになったノート

Almost ten years later,
the note is still with him.

Q.初めて「自分は俳優になりたい」と思ったのは、どんな瞬間でしたか?

公演の最後の日、先生から小さなノートをいただきました。そこには、公演を頑張ったことへの感謝と、「俳優を目指してください」という応援の言葉が書かれていました。

当時の私は、心理学を勉強するか、軍隊に入るつもりでしたが、その出来事が人生の大きな転機になりました。そして、俳優になる決意と自信を与えてくれました。

もう10年近くたちますが、その時にもらったノートは、今でも日本で大切に持っています。

床に横たわるメルレイン
CHAPTER 03

日本で暮らす

A new life in Japan

Q.日本に来ようと思った理由を教えてください。

最初に日本に興味を持ったきっかけは、日本の伝統芸能や昔の映画、音楽でした。たとえば、舞踏、水原弘さん、高倉健さんなどの作品に惹かれて、日本を旅行してみたいと思うようになりました。

そして2023年に初めて日本を訪れた時、一番惹かれたのは、日本人の優しさと、この国で感じた穏やかな空気でした。

その中でも特に印象に残っているのが、初めて銭湯へ行った時の経験です。最初は少し気まずいのではないかと思っていましたが、実際には心が信じられないほど落ち着きました。

皆さんが小さな椅子に座り、時間をかけて丁寧に体を洗い、お風呂に入る姿は、祈っているようで、銭湯そのものがお寺のように感じられました。

日本で過ごす時間が長くなればなるほど、そのような感覚をさまざまな場所や日常の中で何度も感じました。

この国は、自分を成長させたい方向へ導き、挑戦させてくれる場所だと感じました。そして、俳優としても、人間としても、日本で暮らすことでどんな自分になれるのかを知りたいと思い、日本で生活することを決めました。

Both as an actor
and as a human being.

スーツ姿のメルレイン

Q.富山で劇団員として活動した経験について教えてください。富山での生活や稽古の中で、特に忘れられない風景や時間はありますか?

一番忘れられないのは、夏の畑仕事です。

毎日の稽古の前には、自分たちでカボチャやナスなどを育てている畑で作業をしていました。私はもともと朝早く起きることが好きなので、朝食前の自由時間にもよく散歩をしながら畑の様子を見に行っていました。その道では、季節ごとに咲いているさまざまな花や、たくさんのトンボに出会いました。時々、帽子や肩に止まってくれることもありました!

私が富山に来たのは5月で、まだ雪が残っている場所もありました。そして、とても暑い夏を過ごし、10月に富山を離れました。この6か月の間に、季節ごとに咲く花を覚え、その名前や育ち方、生えている場所まで少しずつ分かるようになりました。

その習慣は、今でも続いています。

緑の中に立つメルレイン
CHAPTER 04

小さな出会い

The moments that shape us

Q.これまで演じた役や作品の中で、自分にとって大きな経験になったものはありますか?

日本へ来る直前の半年間、私は「Corpo Maquina」という劇団でフルタイムで活動していました。

この劇団では、公演を制作するだけでなく、貧しい地域に暮らす子どもたちと一緒に演劇やダンスを創作する活動も行っていました。

そこで出会った子どもたちの中には、まだ12歳なのに、厳しい環境の中で育ったため、大人のような考え方や振る舞いをしている子もいました。

ある日、休憩時間にソマリア出身の男の子が「もう少しサッカーをしよう」と声をかけてくれました。私はとても疲れていて、断ろうと思っていたのですが、私が何も言う前にその子は、「あ、ごめんね。すごく疲れているよね。また今度遊ぼう」と言ってくれました。

その言葉にとても驚き、深く心を動かされました。

この経験を通して、演技とはただ演じることではなく、人と本当に向き合い、その人の人生や選択、行動から学び、刺激を受けることなのだと感じました。

温かな光の中で語るメルレイン

Q.いまの自分にとって「好きな時間」はどんな時間ですか?

私にとって一番好きな時間は、とても細かいことで、人との日常的な出会いの中にあることが多いです。誰かがその人らしい話し方や仕草、表現を見せてくれる瞬間や、優しさを感じる瞬間に、一番感動します。

そういう時間は、今アルバイトをしているカフェでよくあります。

私は同僚と比べても、お客様と少し個人的な会話をすることが多いです。髪を切ったこと、新しい花柄のシャツを着ていること、数日お店に来ていなかったことなど、小さな変化に気づいて声をかけます。

すると、お客様の表情がぱっと明るくなったり、マスクを外して笑顔を見せてくださったり、時には手紙や小さなプレゼントをくださることもあります。

そのような瞬間は、私にとって本当にかけがえのない時間です。

また、カフェだけではありません。

家の近くには昔ながらの駄菓子屋さんがあり、午後になると子どもたちや家族、ご年配の方々が自然と集まってきます。

私もよくそこへ行くのですが、多くの方と顔見知りになり、今では友人のような関係になっています。皆さんには本当にさまざまな形で親切にしていただき、日本での生活をより温かいものにしてくれています。

晴れた日の幼きメルレイン





草の上に横たわるメルレイン

Small encounters
make me who I am.

小さな出会いが、
僕をつくる。

ベルギー出身の俳優メルレイン(Merlijn)

掲載:ヒラタオフィス 企画・制作:TABLE MAGAZINES(テーブルマガジンズ) Photographs by Naoki Numahata






メルレイン

プロフィール



STAGE

『SCOT Summer Festival』

準劇団員
(富山県)

2025年

『Free』

(オランダ)

2024年

『FMD』

(オランダ)

2024年

『One from the heart』

(オランダ)

2023年

『Zaak/A/21/03978』

(オランダ)

2023年

『Unpunished youth』

(オランダ)

2023年

『Poles』

(オランダ)

2023年

『It takes a child to raise a village』

(オランダ)

2023年

『Heartscore』

(ベルギー/オランダ)

2023年



FILM

短編映画

『Hazing』

(オランダ)

2024年




Special Issue Contents

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